内視鏡外科手術について正しいのはどれか。2つ選べ。
a: 気腹には酸素を用いる。
b: 標準的気腹圧は10mmHg前後である。
c: 気腹によって胸腔内圧が上昇する。
d: 気腹は肺血栓塞栓症の要因となる。
e: 気腹圧上昇により静脈還流量は増加する。
内視鏡外科手術は開腹手術と比較して、手術創が小さく、術後痛の程度も軽度で、手術に伴って生じる内分泌代謝反応が小さい。また、術後の呼吸機能低下も少ないと考えられている。気腹による呼吸循環系への影響は必ずしも小さくない。
内視鏡手術においては、視野および手術野確保のためガスを腹腔内に注入して手術野を確保する気腹法、腹壁を挙上することによって手術野を確保するつり上げ法とや体位変換を行う方法が挙げられる。
理想的な気腹ガスの条件としては①助燃性をもたないこと、②血液に対する溶解性が高く、血管内に直接入っても塞栓症を起こしにくいこと、③腹膜からの吸収が少ないこと、吸収されても速やかに排泄されることと生体に対する影響が少ないことが挙げられる。
a:腹腔内に炭酸ガス(二酸化炭素)を注入して腹壁を膨らませ、手術の視野を確保する。毒性がない点、助燃性がなく電気メスの使用に制限がない点、血液への溶解性が高くガス塞栓のリスクが少ないなどの理由から炭酸ガスが用いられる。
b:正解。標準的気腹圧は10mmHg前後である。
c:正解。腹腔内圧が上昇し、胸腔内圧も上昇する。胸腔内圧が上昇すると静脈還流量が低下し、心拍出量が低下することがある。これは、胸腔内圧の上昇が中心静脈圧を上昇させ、末梢静脈との圧較差を小さくするためでである。
d:正解。炭酸ガスや腹腔内圧陽圧により腹膜が刺激され、交感神経が興奮し、それによって下肢の静脈血流の速度が低下し、静脈うっ滞が起こる。静脈うっ滞が起こるため深部静脈血栓症を誘発し、肺血栓塞栓症を発症する可能性がある。
e:腹腔内圧が上昇し、胸腔内圧も上昇する。胸腔内圧が上昇すると静脈還流量が低下し、心拍出量が低下することがある。