解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午前:第88問

生体内における物質の移動に関わる現象で正しい組合せはどれか。2つ選べ。

a: 腎臓における水分の再吸収 ー 拡散

b: 腎糸球体での物質移動 ー 濾過

c: 肺胞から血液への酸素の移動 ー 拡散

d: 毛細血管壁から血管外への水分移動 ー 対流

e: 細胞内から細胞外へのNa+の移動 ー 浸透

生体内における物質の移動に関わる現象は受動輸送と能動輸送の大別される。受動輸送とは物質の濃度差を駆動力とする膜輸送である。輸送方向は濃度勾配に逆らわず、輸送に際してアデノシン三リン酸 (ATP) から供給されるエネルギーを必要としないのが特徴である。また、輸送速度は濃度勾配に比例する。受動輸送は拡散、ろ過、浸透の3つの形式に分類される。能動輸送とは、細胞がATPの力を直接あるいは間接的に利用して物質を濃度勾配に逆らって輸送する作用である。

a:原尿は1日に150~180L生成され、尿細管で各物質の再吸収、分泌を受けて最終的には原尿の約1%程度(1.5~1.8L)まで濃縮され、尿となり体外に排出されます。 残りの99%は再吸収され血液に戻る。近位尿細管において60~70%、ヘンレループ下行脚では10~15%、集合管では2~15%程度の水が再吸収される。尿細管内と間質の間の浸透圧差が水の再吸収の原動力となっている。

b:正解。糸球体での尿の濾過は、毛細血管の中と外の圧力差(静水圧差と膠質浸透圧差)によって行われる。
糸球体濾過量(GFR)についての理論式がある。
GFR=Kf・PUF=k・S・(ΔP-ΔΠ)
糸球体濾過係数(Kf)はフィルターの透過性(k)と面積(S)の積であり,濾過の原動力(PUF)は静水圧差(ΔP)よりも小さく,膠質浸透圧差(ΔΠ)を引いたものになっている。静水圧差は糸球体の血圧(約50mmHg)とボーマン腔の内圧(約15mmHg)の差である。膠質浸透圧というのは血漿に含まれる約7% のタンパク質分子によって生じる浸透圧のことである。

c:正解。肺胞では、膜と毛細血管の壁を通して、呼吸による二酸化炭素と酸素のガス交換が行われている。このようなガス交換は、濃度の高低によって物質が移動する拡散現象を利用している。

d:毛細血管壁から血管外(間質)への水分移動は、静水圧較差と膠質浸透圧較差によって行われる濾過現象である。対流とは熱が温度差によって生じた水などの液体、空気などの気体などの流体による移動によって運ばれる現象のことである。

e:Na+は細胞外で高濃度、細胞内で低濃度の状態で保たれている。細胞内から細胞外へのNa+の移動は、低濃度のほうから高濃度のほうへ移動しているので、濃度勾配に逆らう能動輸送で行われている。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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