解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午前:第74問

開心術における心筋保護について正しいのはどれか。

1: 心筋保護液において血液添加は不可欠である。

2: 逆行性心筋保護液注入圧は30mmHg以上とする。

3: 心臓の常温虚血時間の安全限界は5分未満である。

4: 低温によって心筋酸素消費量は低下する。

5: 高度大動脈弁閉鎖不全症例では大動脈基部から心筋保護液を注入する。

Buckbergらは、1987年に心筋保護における重要な6つの要件を提唱している。
①適切な pH を保つ:適切な pH を維持することで嫌気性代謝を抑制
②低体温の維持:エネルギーの温存と酸素消費の抑制
③迅速な心停止:エネルギーの温存と酸素消費の抑制
④ ATP の温存:エネルギー基質であるATP の温存
⑤細胞膜の安定化:低カルシウム血症を予防して細胞膜を安定化させる
⑥心筋浮腫の予防:適切な浸透圧を維持し心筋浮腫を回避

心筋保護液は大動脈基部から冠動脈へ注入する方法、大動脈を切開して直接左右の冠動脈口へ注入する方法を順行性投与という。冠静脈洞より逆行性に注入する方法は逆行性投与という。心筋保護液は以下の2種類に大別される。成人の心筋保護液で最もよく用いられるのは血液添加心筋保護液である。
・晶質性心筋保護液(crystalloid cardioplegia)
血液(ヘモグロビン)を含まない電解質液。溶存酸素のみを運搬する。温度が低い場合には心筋を維持するだけの酸素の運搬で十分である。従って晶質性心筋保護液は心筋冷却とともに用いられる。透明のため無血術野が得られる利点があるが、大量投与で血液希釈が高度となる。
・血液添加心筋保護液(blood cardioplegia)
血液を晶質性心筋保護液に一定割合で混合したもの。ヘモグロビンが含まれるので高い酸素運搬能力があり、冷却時のみならず温かい状態でも使用できる(但し低体温状態では、酸素ヘモグロビン解離曲線が左方に偏位しているため心筋が取り込むことが出来る酸素量は減少している)。また血液に含まれる多くの基質が心筋保護に重要な役割を果たしている。膠質浸透圧が維持されるため心筋浮腫を軽減し、術後心機能を改善出来る利点もある。

1:血液を含まない晶質性心筋保護液(crystalloid cardioplegia)が用いられることもある。

2:逆行性心筋保護液注入圧が40mmHg以上となると、冠動脈損傷、心筋出血、浮腫の危険性があるため、30mmHg以下が望ましい。

3:常温における心筋虚血限界時間は30分未満とされている。心筋虚血の予防と嫌気性代謝の抑制を目指し、stone heartを予防するする必要がある。

4:正解。低体温の維持によって、心筋のエネルギー温存と酸素消費の抑制が可能である。

5:大動脈弁置換症例や上行大動脈の切開を伴う症例では、大動脈遮断後に大動脈起始部の切開を行い、直接左右の冠動脈口へ心筋保護液を注入する。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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