気管挿管中の患者の胸郭の動きに左右差が見られた。疑われる原因はどれか。3つ選べ。
a: 片肺挿管
b: 気胸
c: 呼吸回路の接続外れ
d: 気管チューブの食道挿管
e: 主気管支の痰づまり
気管挿管は、病気や医療行為によって、気道確保、呼吸、血液の酸素飽和度維持ができなくなった場合に、さまざまな場面で適応となる。気管チューブは気管内の適切な位置に留置されていなければ、適切な換気が行われず、この状態が長時間続くと致命的となる。適切な位置にある気管チューブの遠位端は、気管分岐部からおよそ2cm上の気管中部に位置し、これは胸部X線撮影によって確認することができる。気管チューブ先端が気管分岐部より奥に入りすぎると、右主気管支の中に入ってしまい、片肺挿管になる可能性がある。この状況では、左肺が換気に関与できないことがあり、換気血流不均衡による低酸素血症に陥る可能性がある。
a:正解。左右一方の主気管支に挿管チューブが挿入されることで片肺のみの換気となり、結果として胸郭の左右差が認められる。
b:正解。左右一方の肺で空気が胸腔内へ漏れ出し、その空気が肺を圧迫した状態では肺の拡張を得ることが出来ず、結果として胸郭の左右差が認められる。
c:呼吸回路の離脱では、左右どちらの肺に送気できなくなるので、左右差なく胸郭の挙上は得られない。
d:気管チューブが誤って食道に留置されることを食道挿管といい、左右差なく胸郭の挙上は得られない。
e:正解。主気管支に痰が貯留している状況では、送気されにくくなり、送気ガス量に対する肺コンプライアンスの左右差が出やすく、結果として胸郭の左右差が認められる。